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会計ダイバーシティでは働き方の多様性(ワークダイバーシティ)を支援しております。
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【海外トレンド発信】海外で優良なサポート企業を見つける方法

2017年8月26日
モーゲンスターン・シカゴ 代表
米国公認会計士 村田幸伸氏

海外でビジネスを行う際には、現地の法制度や市場に精通したサポート企業との協業が必要となる場合が多い。しかし何のツテも無い場所の場合、せいぜいグーグルで検索するか、知り合いを当たっていくかくらいしか方法がない。

日本と違いサービスレベルの優劣差が激しい海外では、いくつかの企業を当たったところで概ね『ダメ』な場合が殆どだ。レスが遅い。途中から返事が無くなる。聞いた事にきちんと答えてくれない等々、日本人的には許せない事がごく当たり前にまかり通る。

今回は私自身の経験から、年のツテも無いところで良いサポート企業を見つける方法を共有させて頂こうと思う。


例1)UAEの経済特区で法人設立(細かい条件有り)

ドバイには若干のツテがあったが、細かい条件をクリアして業務を進めてくれるようなきちんとしたサポート企業は知らなかった。

そこで、ネット検索してそこそこウエブサイトの情報が整理させているところをめがけて20社くらい同時にメールでアプローチした。翌日までに返事が来たところだけを相手に、更に細かい条件を質問していくと、1社、また1社と脱落していく(返事がなくなる)。最終的に残った2社と現地入り後のミーティングの話を詰めていき、最終的に1社に依頼。1社は万が一依頼した所がダメだった場合の保険として、丁重に事情を説明してお断りしておいた。

結果「ドバイにもこんなしっかりした会社があるんだ」と思うような素晴らしいサポート企業と巡り会う事ができ、法人設立・銀行口座開設・現地監査法人とのMTG・現地市場調査まで1週間で完了する事ができた。



例2)米国での契約書作成(弁護士探し)

米国弁護士にはいくつかのコンタクトがあるが、正直に言うと今まで満足した事が一度もなかった。簡単な契約書を依頼しても数十ページの膨大なものを作ってきたり、細かい質問ばかりして時間を稼がれてなかなか出来上がらなかったり。

今回は二度とその轍を踏まないよう、スクラッチから新たな弁護士を探す事にした。通常まずは契約者双方の契約条件を擦り合わせるためにLetter of intentを作成する。法的効力はない契約内容の確認書類で、これを基に契約書本書を作成する事となる。しかしこのLetter of intentから弁護士に依頼してしまうとここで例の「ああでもない、こうもない」が始まってしまい膨大な量のLetter of intentが出来上がってしまう。

そこで今回は「ディールメモ」という形で契約内容を箇条書きにしたものを自作し、そのメモを先方に共有し、メモベースで契約内容の詳細までの詰めを行った。
後はこのメモを完結な契約書にしてくれる弁護士がいれば良いだけだが、そんな事をしてくれる人は知らない。そこで、弁護士のマッチングサイトにこのメモを共有し、シンプルな契約書を作成してくれる弁護士を募ってみた。

結果7人の弁護士からコンタクトがあり、その7人めがけて例によって細かい質問を投げ込んでいく。するとやはり1人消え、また1人消え、1人は残っているが何を聞いても杓子定規な事を言うのみだったりなど、だんだんと絞られていく。最終的にはレスポンスが非常に早い弁護士に契約書作成を依頼し、たった1日でとてもシンプルな契約書を作成して頂いた。



この二つの事例から、なんとなく海外で良いサポート企業を見つける方法を見いだせた気がした。自分がフワッとした理解のままサポート企業に何かを依頼しても、日本であればその企業が何もかも対応してくれる。しかし海外でこれをやるとフワッとしたものは確実にドロドロになっていく。そこで、まずはしっかりと自分の理解と最終ゴールを固め、そこから数多くのサポート企業を同時に当たるという手法が良いように思った。2社や3社ではすぐに消えてしまうので、できれば10社以上。面倒ではあるがこれをやれば全くツテが無いところでもきちんとした企業を探し出せる可能性が高いと思う。
Xero社とは?

世界のSMB(中小企業)向けの会計ソフトでは米のQuickbooksが最もシェアを持っており、Peachtreeを買収した英Sage社が(大きく水を空けられつつも)それに続く存在として長年君臨していた。両社共にデスクトップ版のソフトが主力で、一度使い始めて慣れるとなかなか他のソフトに移行したくないというユーザー側の事情もあり、安定したシェアを維持していた。

ところがここ数年『クラウド専門』の会計ソフトが大きく存在感を出し始め、Xoro社はその筆頭と言える存在となっている。IT企業としては珍しくニュージーランドを本拠地とする同社は、Quickbooksの本拠地であるアメリカでもシェアを伸ばし始め、Sageの本拠地であるイギリスでもSageとシェアを争う存在となっている。QuickbooksもSageもクラウド版のサービスを提供しているのがだ、デスクトップ版でのソフトウエア開発が長いだけにどうしても『その延長』的なサービスになってしまう。一方Xoroは最初からクラウドなので、クラウドサービスとしての完成度がとても高い。

このXoro社のブログに最近『クラウド時代のAIの活用』に関する記事があり、読んでみると彼らの見ている未来に少しハッとする思いがした。

<Xero社のブログ>
How artificial intelligence and machine learning will transform accounting
https://www.xero.com/blog/2017/02/artificial-intelligence-machine-learning-transform-accounting/
会計処理の、その先

このブログを見ると、序盤から何度もAppleのSiriに触れる部分が出てくる。iPhoneに向かって何かを聞くとSiriが答えてくれるというアレだ。私は車を運転している時以外はSiriなど使わずアプリを手で動かす方が多いので、あまりSiriを凄いと思った事はなかった。

しかしXero社はこのSiriの会計版を目指しているような記事の内容だった。

例えば、上司からこんな事を聞かれた事はないだろうか「あの顧客の今月の売上、いくらだった?先月と比較してどう?」などの質問だ。当然全顧客の売上が頭に入っているわけではないので、「今調べます」と言ってシステムをいじる事になるのだが・・・・・・。そう、Xero社はこれをAIでできると考えているのだ。

AIに質問すれば即時に「◯◯ドルです。先月は◯◯ドルです。◯%アップです」などと答えられてしまうというのだ。
クラウドとデスクトップの大きな違い

Xero社はAI活用においてクラウドの重要さを力説している。AIの機械学習においては、学習する内容が多ければ多い方が優秀な脳ができあがる。

デスクトップ版ではその企業固有の例しか見れないが、クラウドであれば世界の無数のXeroユーザーのデータを分析して学習し、精度の高いアウトプットができるようになるという訳だ。

当然ユーザー毎の『癖』の分析も学習できるので、ユーザーの嗜好を見抜いて『ちなみに利益は△△ドルで、原価率は△△%でした』というように気の利いた追加情報も出せるだろう。
チャットボットとの連携も

私がSiriをあまり使わない理由の一つとして、オフィスや人前でiPhoneに向かって話すのが何となく嫌だというのがある。会計業務でも声に出して何か聞くより、いきなりシステムを動かして調べる方が早い。

しかし経営層や営業など、日頃システムを使い倒してはない人達にとって『聞ける』というのは便利だろう。しかもXoro社はチャットボットとの連携を志向しており、声に出して聞かなくてもチャットで聞くとAIが即時に答えるという世界を考えている。もうこうなると『経理に聞くよりチャットでAIに聞く』というのが普通になるだろう。
会計士も・・・

私はどうしても現在の業務の延長線上でAIの活用をイメージしてしまい『この業務をAIが判断してうまくやってくれたらなぁ』などと考えていた。しかし本当の未来はその先にあって、クライアントから来る質問も私よりもAIにチャットで聞いた方がよほど早くて正確な答えが出るような事が起こるかもしれない。いや、きっと起こるだろう。

Xoroがここ数年であっという間にシェアを拡げたように、会計のAIサービスも出てきたら早いかもしれない。これからは『AIが将来できてしまう事』をできるだけ明確にイメージして、今後の業態を考えていかなくてはならないと思う。

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