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ワークダイバーシティ

会計ダイバーシティでは働き方の多様性(ワークダイバーシティ)を支援しております。
勤務をしていると、現職の業務中心でなかなか他業界、異職種の情報は入り難いことと思います。
様々な職種(業務内容)や勤務スタイル、海外勤務例などを紹介してまいります。ご自身の今後のキャリア形成の参考として頂けますと幸いです。

【海外トレンド発信】遂に来た グローバルフリーランサーの時代

2022年3月2日
モーゲンスターン・シカゴ 代表
米国公認会計士 村田幸伸氏

コロナ禍に入って丸2年が過ぎ、リモートワークやZoom会議など新たな働き方がすっかり普及した。そしてそれに伴い雇用環境も大きく変化を遂げた。自分の例で言うと、今までフルタイムで雇用していた従業員が全員退社した。コロナ前は通勤圏内である弊社で働いてくれていた人が、リモートになると全米のどこの会社でも働けるようになったため、大手企業でよりよい報酬を得て働く事ができるようになったのだ。とても良い事がではなるが、おかげで弊社の従業員は自分一人のみとなった。ところが、これは全く悲惨な事ではなかった。現在弊社のフルタイム従業員は自分一人だが、そのかわり世界9カ国に居住する24人のフリーランス達と一緒に仕事をしている。アメリカ、フランス、イタリア、スペイン、ウクライナ、ベネズエラ、カナダ、ポーランド、オランダ。今はこれくらいだが今後はもっと増えていくだろう。
コロナ後のUpworkは経営インフラ
以前Upworkというアメリカのクラウドソーシングサービスをこちらで紹介した事があった。当時はプロジェクト的な仕事を単発でお願いする程度の利用だったが、コロナ後はこのUpwork内の盛り上がりが凄い事になった。何しろ世界中の人たちがリモートで仕事をするようになったのだ。フリーランサー達の数も質も急上昇し、当然その人達に仕事を依頼したい自分のような雇用者側も一気に増えた。それによって今まででは考えられなかったような雇用環境が実現した。例えば、ある産業のヨーロッパのマーケティング・リサーチをしたいとしよう。会計の業務なら発注しやすいが、畑違いの業務だと普通ななかなか難しい。「ヨーロッパに誰かマーケティングに詳しい人いませんか?」などと知り合いに当たったりなど、非効率で不毛な方法しか今まではなかった。ところが今ではUpworkに「こんな調査をお願いしたんですが、誰かできる人いませんか?」と投稿するだけ。すると24時間以内に概ね30人程の候補者が世界中から「私できますよ!」というプロポーザルを出してくる。その中から数人とUpwork内のチャットでやりとりした後、2人くらいに分けて発注。最初の業務の感じで良い方とその後もお付き合いをしていくという具合だ。便利過ぎてもうUpwork無しでは仕事が回らない程のインフラとなってしまった。
定額と時給
支払い方法は大きくこの2つとなる。定額の場合「○○の業務を○○ドルで」という形で取り決める。大きめの業務の場合はいくつかに分けてマイルストーンを設定し、マイルストーン1終了までで○○ドルといった要領でマイルストーン毎に金額を決めることもできる。雇用側は発注時にマイルストーン1の金額をUpworkに支払い、フリーランスはその通知を受けて業務を開始する(不払いリスクがない)。業務後は雇用主がマイルストーン1の金額をリリースし、Upworkからフリーランスに支払いが行われる。両者にとって安心できるシステムだ。時給の場合は発注者がクレジットカードを事前に登録して業務が開始される。あとは毎週フリーランス側が○○時間働いたという情報をインプットし、雇用主はそれを確認する。問題なければ週末締め翌週月曜払いで自動的にクレジットカードに課金され支払いが行われる。
優秀な人ほど定額を好む
しばらくUpworkを利用していたわかった事は、優秀な人ほど定額を好むという事だ。時給だと同じ仕事を依頼しても、AさんとBさんでは2倍以上の時間の差が出てしまう事がある。それでも雇用側は両方時給で支払うので、フリーランスに優しい支払い方法ではある。しかし、優秀な人は他の人の5倍くらい早く業務を完了してしまうこともある。そうなると優秀な人にとってはフェアな条件ではなくなってしまう。だからと言って「自分は優秀ですから相場の5倍の時給をいただきます」という提示をしてしまったら依頼側がなかなかその人を選びににくい。なので優秀な人は定額の契約で相場の金額を提示し、他の人の5倍のスピードで終わらせるという方法を取るようだ。これは依頼側にとってとても有り難い事で、同じ費用で5倍のスピードで仕事が進む事になる。

この環境に慣れてしまうと時給で仕事を依頼するのもフェアではないように思えてきてしまうので、今までは普通だった月給や年収での契約というのはもうあり得ない気がしてきてしまう。仕事を実際にした分だけお金をもらうという働き方は厳しい条件のように見えるが、優秀な人にとってはこれほどフェアな事はないのだろう。
金額の差はサービスの差とは無関係
しかしそれでも、英語でのコミュニケーションが不安定だったりすると困るので、時給が高くても安心できる人に頼みたいという気持ちもある。ところが、実際に各人とやりとりしてみると金額の差はサービスの差とは関係ない事がよくわかった。一番期待していたイギリス人はレスポンスがとても遅く内容も的を得ない。最もやりとりがスムーズだったのはウクライナの方であった。彼はウクライナで英語圏の企業向けのウエブサイト構築サービスをチームで展開しているらしく、実績も殆どアメリカ企業の顧客。英語もパーフェクトでやりとりも簡潔で、現地時間の23時ごろでも返事を返してくれるようなスピード感であった。しかも時給は$25。もう彼のチームしかないという事で発注する事となった。

考えてみると今まで発注していた会計業務もアメリカ国内に限定する理由は殆どなかった。全世界に向けて発注していたらもっと良い方々に付加価値の高い仕事を依頼できていたかもしれない。そう思うともう次回からは間違いなく“全世界”を指定して募集をかけるようになるだろう。業務のリモート化が進んだ昨今はこうも簡単に海外に業務を依頼する事ができてしまう。こうなると英語圏の先進国で仕事をしている人達はどんどん厳しくなってくる。会計業界でもこの流れは更に進んでいくのだろう。
第2ラウンドスタート

4月27日に第2ラウンドのローン受付がスタート。今度の予算は$250B。前回より少ない。今回は大企業が申し込みしにくい世論環境が整ったが、それでも一瞬で無くなってしまう気配は濃厚だ。メガバンクのローン申請システムは未だにフリーズ状態でカクカク言っている。埒が明かない。そこで私は新興勢に目をつけた。Paypalだ。私が取締役をしている企業の殆どはメガバンク経由での申請で立ち往生していたためPaypalでのローン申請に切り替えた。今回の件でパンク状態となってしまった金融機関を補完すべく、政府はPaypalなどの新興フィンテック勢にも銀行免許を急遽発行したのだ。『新興のPaypalであればまだパンクしていないはず』という目論はみごとに当たり、トントンとプロセスが進む。結果ローン申請は3日ほどで完了し、後は政府からの返答待ちという状態となった。$250Bに潜り込めたかどうかはあと数日後にわかるだろう。

もし潜り込めたら2ヶ月間は今の人員を維持できる。しかしダメだったら更なるリストラを決行する必要が出てくるかもしれない。全てはロックダウンがいつ終わり経済が正常に戻るかにかかっている。ピリピリした春になりそうだ。

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