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【海外トレンド発信】国際企業が知るべきアメリカ大手銀行の組織構造

2020年10月2日
モーゲンスターン・シカゴ 代表
米国公認会計士 村田幸伸氏
シカゴの顧問先企業で、銀行口座を新たに開設する事になった。現在のメインバンクである大手Ci銀行が、このところヨーロッパ諸国との送金や入金がある度に細かい問い合わせをしてくるようになり気掛かりだったからだ。最近アメリカではマネーロンダリングやテロ防止に関するレギュレーションがとても厳しくなっており、日本企業の在米子会社など国外株主の企業に対する監視が強度を増している。ただ厳しくなるなら良いのだが、書類が増え手続きが複雑になり、末端の銀行員が全くレギュレーションを理解していないため、不本意な事で海外送金が遅れてしまうという事が起こっていた。このままだと不安だったのでライバル大手Ch銀行で新たに口座を開設する事にした。

支店長の快諾
まずは私個人と私の会社でお世話になっている近所の支店にアポを取って訪問。趣旨を伝えると「全く問題ないです。すぐに開設しましょう」という事で早速手続きに入った。アメリカやヨーロッパで口座を開設する時に必ず必要となる一連の資料を持っていったが、それは必要ないという。株主構成図や実質的オーナーの情報など、普通は間違いなく必要になるのだが、どうも何の事だがピンと来ていない様子だった。私の目の前でパソコン画面を見ながら口座開設手続きを進めていく支店長だったが、20分を経過したあたりから眉間のシワがどんどん深くなっていく。恐らく初めて遭遇する画面に行き着き、どんな情報を入れるべきかわからなくなってきたのだろう。「ちょっと時間がかかりそうだから、手続きが終わったら明日にでも連絡しますよ。」と言われ、ひとまず退散する事となった。
地域担当法人バンカーから断りの電話
翌日、支店長経由でこの地域を担当するビジネスバンカーから電話があった。彼曰く、支店は基本的に個人客相手なので、法人は法人チームが担当しているそうだ。彼らは支店には籍をおかず、担当地域を広くカバーしているらしい。この点は現在の大手Ci銀行と全く同じ組織形態だ。そして彼が言うには「海外オーナーの会社の口座は今は開設できない」という事だった。追加書類を次々と要求される事は覚悟していたが、まさかできないという返事は想像していなかった。おかしいなとは思ったのだが、彼とこのままやりとりしても進みそうにないので、とりあえず「そうですか。わかりました。」と言って退散した。
国際企業担当ビジネスバンカーに辿り着く
アメリカの大手銀行ともあろうものが、海外オーナーだと法人口座を開設できないなんて事があるはずはない。もう一度支店長を訪問し相談したところ、支店も法人の地域担当も、基本的には国内企業しか扱っていないので、国際企業だとどうしたらいいかわからないんだとの事だった。しかしどこかの支店か部門で、国際企業を扱っているはずだと訴え色々調べてもらったところ、やっとの事で中西部担当の国際法人バンカーにたどり着いた。Zoomで面談したところ「支店になんて行っちゃダメですよ。支店じゃ国際企業の事はわかりませんから。」との事。アメリカ政府から頻繁に監査を受ける大手銀行は、頻繁に変わるレギュレーションに対応できる国際部門を持っており、そこでしか国際企業の案件は扱えなくなっているそうだ。ここ数年でそのような組織体制になったらしい。お陰様でやっとの事で無事口座を開設する事ができた。

最初からここに相談しなければいけなかったのだが、そのような窓口はどこにも情報が載っていないのでコンタクトのとりようがなかった。国際企業へのレギュレーションは今後も厳しく複雑になっていきそうなので、まずは正しい担当部門を見つけ出す事がとても大事なんだという事を学んだ一件だった。

翌日審査完了でスピード融資
ポチッた翌日、融資審査が通ったという通知と共に融資契約書がメールで送られてきた。オファーされた融資上限金額がそのまま銀行に振り込まれ、それが元本になるようだ。となると先に受け取ったアドバンスは融資金額に含まれない事になる。やはりあれは本当にただ補助してくれただけだったのだろうか。。金利の3.75%は安くはないが、アメリカで普通に融資を受けようとすると4%~6%の金利がかかる。そう考えると、今後の不測の事態に備えて借りておいた方がいいかもしれないと思い、そのままこの融資を受ける事にした。

返済は12ヶ月後からスタートする事になっているが、どこにどうやって返済するのかもまだ明らかにされていない。きっと何らかの返済システムを準備して12ヶ月以内には明示されるのだろう。準備が整う前にどんどん始めてしまうあたりが実にアメリカらしいと感じた一件であった。
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ローンを受けた大企業は連日次々と判明し、新聞等で大バッシングを受けた。このバッシングによりLAレイカーズなど多くの企業が政府にローンをすぐさま返金するという事も起きた。しかしマスコミに嗅ぎつけられていない大企業は未だ多く、恐らくバレるまでは返金しないというスタンスを取るのだろう。
第2ラウンドスタート

4月27日に第2ラウンドのローン受付がスタート。今度の予算は$250B。前回より少ない。今回は大企業が申し込みしにくい世論環境が整ったが、それでも一瞬で無くなってしまう気配は濃厚だ。メガバンクのローン申請システムは未だにフリーズ状態でカクカク言っている。埒が明かない。そこで私は新興勢に目をつけた。Paypalだ。私が取締役をしている企業の殆どはメガバンク経由での申請で立ち往生していたためPaypalでのローン申請に切り替えた。今回の件でパンク状態となってしまった金融機関を補完すべく、政府はPaypalなどの新興フィンテック勢にも銀行免許を急遽発行したのだ。『新興のPaypalであればまだパンクしていないはず』という目論はみごとに当たり、トントンとプロセスが進む。結果ローン申請は3日ほどで完了し、後は政府からの返答待ちという状態となった。$250Bに潜り込めたかどうかはあと数日後にわかるだろう。

もし潜り込めたら2ヶ月間は今の人員を維持できる。しかしダメだったら更なるリストラを決行する必要が出てくるかもしれない。全てはロックダウンがいつ終わり経済が正常に戻るかにかかっている。ピリピリした春になりそうだ。

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