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【海外トレンド発信】欧米企業を襲うKey Employee Risk

2020年3月27日
モーゲンスターン・シカゴ 代表
米国公認会計士 村田幸伸氏


『もし今のトップがいなくなったら本当に困る。』私が取締役会に入っている欧米の企業で株主達がよく口にする言葉だ。実際にイギリスの企業ではCEOが離職ギリギリまで行く事件が起こった。幸い水際で引き止める事ができたがもし本当に離職していたら非常にまずい事態になっていたと思う。弊所にお問い合わせを頂く日本の上場企業の方々も『海外グループ企業トップのサクセションプランが課題だ』と口を揃えて仰るので、恐らく多くの企業で同じ悩みを持っているのではないだろうか。

キーパーソンの離職が起こす組織劣化
代えの効かない重要人物は、多くの知識やノウハウや経験を持っている。これらが組織から消えるとどうなるか。まずは全ての“リアクション”が遅くなる。キーパーソンならあたかも直感的に判断したり応答したりする事ができていた事が、他の人達にはできない。時間をかけてリサーチしたり討議したりして、それでも本当に正しいかどうかわからないまま業務が進行する。その結果組織内の自信が失われていく。ストレスも溜まる。するとネガティブな雰囲気が蔓延し更なる離職者も増えるという負のスパイラルに入っていく。私が取締役になっている各企業でもそのような状態に陥る事は容易にイメージする事ができる。これはコーポレイトガバナンス上とても大きなリスクであり、最優先して取り組むべき事のひとつだ。

S&P 500企業では12%のCEOが毎年離職
欧米は離職率が高い。2017年のアメリカのデータではS&P 500の大企業ですら12%のCEOが同年に離職していた。10社に1社以上の確率だ。CEOだけでこの離職率だが、企業の中には他にも代えが効かないキーパーソンが多く存在するはずだ。スカウトやヘッドハンティングが発達した近年ではこういったキーパーソンであればあるほど離職の確率が高くなる。企業は絶えずこのリスクに晒されつつ、なかなか有効な対策が打てていないのが現状だ。

先日イギリスのFinancial Management誌でその対策についていくつか興味深い手法が提案されていた。とてもヒントになる内容だったので以下にまとめてみたい。



Financial Management
https://www.fm-magazine.com/news/2019/jan/how-to-manage-key-person-risk-201819925.html?utm_source=mnl:adv&utm_medium=email&utm_campaign=10Mar2020&SubscriberID=131408244&SendID=263522
1.キーパーソンのバックアップ
キーパーソンを二人雇っておく事はもちろん不可能だが、キーパーソンの仕事を業務毎に縦割りし、業務毎にカバーし得る人材を育てておく事は可能だろうというのが一つ目の提案だ。キーパーソンと同じようにその仕事をできる人はもちろんいない。しかし業務毎であれば近づける可能が高くなるし、別の業務をこなしながらカバーする事ができる。
2.キーパーソンからキーチームへ
個人に依存するリスクを軽減するために、知識やノウハウを積極的にチームに共有し、個人ではなくチームがキープレイヤーになる事を目指そうというのが二つ目の提案だ。ブラックボックス化しているキーパーソンの意思決定やアイディアや動きを全てチームで共有し『あの人ならこう考えるはずだ』という共通認識を持ち、それを発展させて『このチームはこう考えるべきだ』というところまで昇華させるイメージだ。通常キーパーソンは自分のノウハウを誰にも共有したがらない事が多いので、それを可能にする何らかのインセンティブが必要となるだろう。
3.人ではなく機能で考える
キーパーソンがいなくなるリスクを考えると、どうしてもその人と似たような人を獲得したくなる。しかし現実にはその人と同じような能力を持つ人を獲得する事は不可能だ。いなくなる人のところに別の人をはめ込むという安直な発想には無理があるし、戦略的に組織を調整していく事から逃げてしまっているとも言えるだろう。そこで、同じような人ではなく、組織に必要な機能を戦略的に考え、その機能にフィットする人を探そうというのが三つ目の提案だ。革新性が必要なら革新的な人。組織をひとつにするチームビルディングが必要ならスタイルは違っても組織づくりが上手い人。もちろん一人で全てをカバーする必要もなく、必要な機能毎に数人で受け持つというのもありだ。そうする事で新たなキーパーソンを中心とした新たな組織形態が生まれていくだろう。


三つとも簡単にできる事ではないが、本気で取り組んでみる価値がある方策のように思う。特に「あの人を代わりを見つける事も育てる事も、なかなか難しいなぁ」というところで思考がスタックしてしまっている(私のような)人には大きなヒントなのではないだろうか。CEOのサクセションプランはコーポレイトガバナンスの肝のひとつだ。安直な方法に逃げずに実現可能で実効性のある方策にトライしていかなければいけないと感じた記事であった。
データオタクにならないために

BIを使うと様々なデータをビジュアライズして見る事ができるので、ハマるととても面白い。しかしともするとデータを整備する事が目的になってしまい「で、それを見て何を判断するの?」というダッシュボードやチャートがたくさん作られてしまう事がある。データはあくまでも意思決定のツールなので、使えるデータのみを使える形で整備するよう心がけたい。また、飛行機のコクピットのように沢山の計器があると、全てを見きれず使いこなせないという事も起こりがちだ。日頃は見ないでも良いデータは隠しておいて異常値の時のみアラートを出すなどの工夫をして、ダッシュボード内をスッキリ保つ工夫も大切だ。

Klipfolioのような安価なクラウドサービスが出てくると気軽に試行錯誤ができるので、今後もっと流行していくのではないだろうか。

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