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【海外トレンド発信】コロナ関連法人税額控除Employee Retention Credits

2020年9月17日
モーゲンスターン・シカゴ 代表
米国公認会計士 村田幸伸氏
コロナ関連の米国政府の補助金や救済ローンが一段落し、今度は年度末を見据えての税制改革が話題となっている。CPA達の間で最近トピックとなっているのはコロナの影響で損失を被った企業の法人税額の一部を免除してあげようという法人税額控除Employee Retention Creditsだ。ここ数ヶ月、なんとかこの新税法の適用を受けたい企業達からCPAに問い合わせが殺到していた

税額控除の概要
業績が悪化しているにも関わらず従業員を雇用し続けた企業に対するインセンティブとしてこの税額控除が適用される。具体的には50%以上売上が落ちた企業が対象となり、受けられる税額控除は従業員一人当たり$5,000が上限となる。さほど大きな金額ではないながら、従業員が多い企業にとってはとても有り難い。税額控除なので、支払うべき税金をダイレクトに減らせるので、一種の補助金と言っても良い内容だ。
売上50%減を作り出そうと不毛な努力
売上50%減を証明するためには年度内のいずれかの四半期で昨対比50%減となっている事を示す必要がある。私の周りのCPA達の話によると、多くの企業がこの条件をクリアすべく売上計上を後の四半期にずらす努力などをしていたらしい。しかし、コードを細かく読むとここで言う売上は現金入金額で計算する必要があり、会計的な計上売上金額を操作しても意味がない。現金入金を次の四半期にずらすというのはなかなかできる事ではないので、50%減を捏造するのはなかなか難しい。
ソーシャルメディア時代の情報リテラシー
以前ならこのような新税法や政府の補助金はCPA達からクライアントに伝えられ、その内容は当然的を得たものであった。ところが最近は企業の上層部世代もSNSを使うような時代なので、一般個人が発信する信頼性の低い情報が飛び交うようになり、情報リテラシーの低い人達がそれに踊らされてしまう事が多くなった。私も先日クライアントの社長から「イリノイ州から補助金がもらえるらしいからこの会社にコンタクトしてみてよ」と言われ、調べてみたらとても単純な補助金申請代行詐欺であった。この情報を社長は友人から聞いたらしいので、恐らくその友人はまんまと引っかかってしまったのだろう。

ソーシャルメディがが普通になりテレワークも普通になった今の時代では、今までとは違った情報リテラシーを持つ必要がありそうだ。

翌日審査完了でスピード融資
ポチッた翌日、融資審査が通ったという通知と共に融資契約書がメールで送られてきた。オファーされた融資上限金額がそのまま銀行に振り込まれ、それが元本になるようだ。となると先に受け取ったアドバンスは融資金額に含まれない事になる。やはりあれは本当にただ補助してくれただけだったのだろうか。。金利の3.75%は安くはないが、アメリカで普通に融資を受けようとすると4%~6%の金利がかかる。そう考えると、今後の不測の事態に備えて借りておいた方がいいかもしれないと思い、そのままこの融資を受ける事にした。

返済は12ヶ月後からスタートする事になっているが、どこにどうやって返済するのかもまだ明らかにされていない。きっと何らかの返済システムを準備して12ヶ月以内には明示されるのだろう。準備が整う前にどんどん始めてしまうあたりが実にアメリカらしいと感じた一件であった。
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ローンを受けた大企業は連日次々と判明し、新聞等で大バッシングを受けた。このバッシングによりLAレイカーズなど多くの企業が政府にローンをすぐさま返金するという事も起きた。しかしマスコミに嗅ぎつけられていない大企業は未だ多く、恐らくバレるまでは返金しないというスタンスを取るのだろう。
第2ラウンドスタート

4月27日に第2ラウンドのローン受付がスタート。今度の予算は$250B。前回より少ない。今回は大企業が申し込みしにくい世論環境が整ったが、それでも一瞬で無くなってしまう気配は濃厚だ。メガバンクのローン申請システムは未だにフリーズ状態でカクカク言っている。埒が明かない。そこで私は新興勢に目をつけた。Paypalだ。私が取締役をしている企業の殆どはメガバンク経由での申請で立ち往生していたためPaypalでのローン申請に切り替えた。今回の件でパンク状態となってしまった金融機関を補完すべく、政府はPaypalなどの新興フィンテック勢にも銀行免許を急遽発行したのだ。『新興のPaypalであればまだパンクしていないはず』という目論はみごとに当たり、トントンとプロセスが進む。結果ローン申請は3日ほどで完了し、後は政府からの返答待ちという状態となった。$250Bに潜り込めたかどうかはあと数日後にわかるだろう。

もし潜り込めたら2ヶ月間は今の人員を維持できる。しかしダメだったら更なるリストラを決行する必要が出てくるかもしれない。全てはロックダウンがいつ終わり経済が正常に戻るかにかかっている。ピリピリした春になりそうだ。

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