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【海外トレンド発信】失業者が増えたアメリカで何故か人が雇えない

2021年2月22日
モーゲンスターン・シカゴ 代表
米国公認会計士 村田幸伸氏

アメリカではコロナの影響がなかなか収まらず、未だに多くの地域でロックダウンに近い状況が続いている。飲食や小売や旅行など、多くの業界で縮小を余儀なくされ、それにより多くの失業者が発生している。「こんな時だから、失業したら仕事を探そうにも求人が殆どないのだろう」と思っていたのだが、どうやらそうでもないらしい。

求人を出しても求職者が来ない
昨年6月頃に求人広告を出した時はもの凄い勢いで求職者が集まった。1つのポジションに対し毎日20人を超える求職者からレジュメが届き、見るのが大変なので数日でクローズした程だった。結果とても有能はスタッフ達を採用する事ができた。ところが今回は求人を出して1週間が経過しても求人はたったの3人。条件にあてはまる人が1人しかいかなったのでその人を面接したところ『もっと高い給与の企業に行きたい』という理由であっさり向こうから断れてしまった。半年前とは全く違う状況になってしまい大いに戸惑った。
原因は失業保険
そんな中、よく行くレストランのオーナーと話をしていると「解雇や一時帰休にしたスタッフが全然戻ってきてくれない」と言って悩んでいた。彼曰く「あんな金額の失業保険を貰えるなら、誰だって働かないよ」という事だった。それを聞くまで失業保険の金額をあまり気にした事がなかったのだが、金額を聞いて驚いた。政府からのコロナ対策援助により、今失業保険を申請すると通常の保険金にプラスして週600ドル加算して支払われるのだ。週600ドルという事は、加算分だけで月に2,500ドル以上もらえる事になる。これに通常の失業保険をプラスしたら、今まで貰っていた給与より高くなる人がたくさんいるという事だ。
エントリーレベルやアルバイトに影響
元の給与がある程度高い人はこの影響はなさそうだが、エントリーレベルのポジションや飲食業のパートやアルバイトなどは、今なら失業して失業保険をもらった方が収入が多くなる人が多い。なんとか人を雇おうと失業保険を超える給与を払おうとすると、ただでさえ経営が苦しくなっている飲食店の経営が更に苦しくなる。

結果的には多くの人の失業保険の支払期間が切れて、働くインセンティブが戻る時期まで採用を待つ事になるのが多いのだろう。


翌日審査完了でスピード融資
ポチッた翌日、融資審査が通ったという通知と共に融資契約書がメールで送られてきた。オファーされた融資上限金額がそのまま銀行に振り込まれ、それが元本になるようだ。となると先に受け取ったアドバンスは融資金額に含まれない事になる。やはりあれは本当にただ補助してくれただけだったのだろうか。。金利の3.75%は安くはないが、アメリカで普通に融資を受けようとすると4%~6%の金利がかかる。そう考えると、今後の不測の事態に備えて借りておいた方がいいかもしれないと思い、そのままこの融資を受ける事にした。

返済は12ヶ月後からスタートする事になっているが、どこにどうやって返済するのかもまだ明らかにされていない。きっと何らかの返済システムを準備して12ヶ月以内には明示されるのだろう。準備が整う前にどんどん始めてしまうあたりが実にアメリカらしいと感じた一件であった。
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ローンを受けた大企業は連日次々と判明し、新聞等で大バッシングを受けた。このバッシングによりLAレイカーズなど多くの企業が政府にローンをすぐさま返金するという事も起きた。しかしマスコミに嗅ぎつけられていない大企業は未だ多く、恐らくバレるまでは返金しないというスタンスを取るのだろう。
第2ラウンドスタート

4月27日に第2ラウンドのローン受付がスタート。今度の予算は$250B。前回より少ない。今回は大企業が申し込みしにくい世論環境が整ったが、それでも一瞬で無くなってしまう気配は濃厚だ。メガバンクのローン申請システムは未だにフリーズ状態でカクカク言っている。埒が明かない。そこで私は新興勢に目をつけた。Paypalだ。私が取締役をしている企業の殆どはメガバンク経由での申請で立ち往生していたためPaypalでのローン申請に切り替えた。今回の件でパンク状態となってしまった金融機関を補完すべく、政府はPaypalなどの新興フィンテック勢にも銀行免許を急遽発行したのだ。『新興のPaypalであればまだパンクしていないはず』という目論はみごとに当たり、トントンとプロセスが進む。結果ローン申請は3日ほどで完了し、後は政府からの返答待ちという状態となった。$250Bに潜り込めたかどうかはあと数日後にわかるだろう。

もし潜り込めたら2ヶ月間は今の人員を維持できる。しかしダメだったら更なるリストラを決行する必要が出てくるかもしれない。全てはロックダウンがいつ終わり経済が正常に戻るかにかかっている。ピリピリした春になりそうだ。

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