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【海外トレンド発信】欧米で頻発するクレジットカード詐欺

2021年1月21日
モーゲンスターン・シカゴ 代表
米国公認会計士 村田幸伸氏

パンデミックになりアメリカでは失業保険詐欺が流行中だという記事を以前書いたが、失業率が増えると他の詐欺もどんどん増えて高度化してくる。今回シカゴにある私のクライアント企業2社で、とても高度なクレジットカード詐欺にかかってしまった。
UBERを利用した詐欺
まずひとつ目は、高額商品をクレジットカードで購入し、商品引取をUBERにさせるというケースだった。クレジットカードは闇で仕入れたと思われる第三者のもので、数万ドルの商品を購入。商品を発送されると足がつくので「今すぐ欲しいから取りに行く」と伝え、UBERを使って第三者に商品をピックアップさせる。そして入手した高額商品をそのまま第三者に売却して現金化するというトリックであった。会社名も氏名もクレジットカード情報も全て本人のものではなく、UBERを使われたため犯人と会ってもいない。全く足がつかない詐欺であった。クレジットカード情報を盗まれた被害者は数万ドルのチャージに驚き、すぐにクレジット会社にチャージバックの申請をしたので、最終的な被害者は商品を売った側となった。恐ろしいのはこの犯人はこのクレジットカードが数万ドルの高額商品購入に使える事を知っていた点だ。最近のカード犯罪はそのカードの利用限度額などの情報とセットになっているのかもしれない。
ドイツからの国際カード詐欺
2つ目は別の企業で、2ヶ月前からドイツの新規顧客から2千万ドル超の商品購入の問い合わせがあり、11月にやっとの事で商談が成立したケースであった。金額が高い事もあり、複数回に分けて数枚のクレジットカードで支払を受取り、12月の出荷に向けて準備をしてした。するとドイツから連絡が入り「今月中に受取れないと困る。受け取れないならキャンセルする!」と言ってきた。せっかくの大口商品販売をフイにしたくない販売側は空輸便を必死になって探したがそんな急には見つからない。「12月中の到着は無理だが1月中旬なら可能だ」と伝えたところ「それではダメだ。ならキャンセルする。返金してくれ!」と主張。困りはてていたところでまたドイツから電話が入り「私の知人のプラベートジェット便に載せられれば年内到着が可能だ。できるか?」との事。もちろんできると答えると「輸送費を前払いで2万ドル支払う必要がある。今すぐ2万ドルをこの銀行口座に振り込んでくれ。その同額をこちらのクレジットカードに課金してくれて構わない。」との事。これで無事商談をクロージングできると喜んだ販売側は急いで国際送金を行い、その費用をクレジットカードに課金した。ところが数日後、被害にあった数人のクレジットカード保有者がチャージバックを申請。入金したと思われた売上金の全てが消えた。そして残ったのはプライベートジェット空輸費用の2万ドルの被害。銀行口座はドイツの口座なので犯人を突き止めるのも容易ではない。結果泣き寝入りとなってしまった。

両社共に、以降はクレジットカード決済に対する認識を改め、高額なものは銀行振込しか受け付けないようにポリシーを変更した。私のクライアントだけで2社被害が発生したところを見ると、世界ではかなり多くの詐欺が発生しているのだろう。不安定な時期は不正が増える事を肝に銘じ、通常時よりも管理を強化しなければならない事を実感した事件であった。
金融業より緩い規制
消費者から金利を取るタイプのサービスは金融業となり政府の規制の対象となるが、これらの分割払いサービスは基本的に消費者からの金利は取らない場合が多い。店舗側から販売金額に応じた手数料を取るタイプのビジネスモデルなので、決済機能を提供するサービスとして成り立っており規制が金融業よりも緩くなっているらしい。この理由でITスタートアップ企業が一気にこのサービスを伸ばしてきたようだ。

Paypalは既に金融業としてのライセンスを取得しているが、これらの新興サービスも先々金融業免許をすれば既存顧客に更なるクレジットを提供する事もできるようになるだろう。そうなるとクレジットカード会社や銀行との競争にもなってくる。金融業界は今後もIT業界との競争が熾烈になってきそうだ。


翌日審査完了でスピード融資
ポチッた翌日、融資審査が通ったという通知と共に融資契約書がメールで送られてきた。オファーされた融資上限金額がそのまま銀行に振り込まれ、それが元本になるようだ。となると先に受け取ったアドバンスは融資金額に含まれない事になる。やはりあれは本当にただ補助してくれただけだったのだろうか。。金利の3.75%は安くはないが、アメリカで普通に融資を受けようとすると4%~6%の金利がかかる。そう考えると、今後の不測の事態に備えて借りておいた方がいいかもしれないと思い、そのままこの融資を受ける事にした。

返済は12ヶ月後からスタートする事になっているが、どこにどうやって返済するのかもまだ明らかにされていない。きっと何らかの返済システムを準備して12ヶ月以内には明示されるのだろう。準備が整う前にどんどん始めてしまうあたりが実にアメリカらしいと感じた一件であった。
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ローンを受けた大企業は連日次々と判明し、新聞等で大バッシングを受けた。このバッシングによりLAレイカーズなど多くの企業が政府にローンをすぐさま返金するという事も起きた。しかしマスコミに嗅ぎつけられていない大企業は未だ多く、恐らくバレるまでは返金しないというスタンスを取るのだろう。
第2ラウンドスタート

4月27日に第2ラウンドのローン受付がスタート。今度の予算は$250B。前回より少ない。今回は大企業が申し込みしにくい世論環境が整ったが、それでも一瞬で無くなってしまう気配は濃厚だ。メガバンクのローン申請システムは未だにフリーズ状態でカクカク言っている。埒が明かない。そこで私は新興勢に目をつけた。Paypalだ。私が取締役をしている企業の殆どはメガバンク経由での申請で立ち往生していたためPaypalでのローン申請に切り替えた。今回の件でパンク状態となってしまった金融機関を補完すべく、政府はPaypalなどの新興フィンテック勢にも銀行免許を急遽発行したのだ。『新興のPaypalであればまだパンクしていないはず』という目論はみごとに当たり、トントンとプロセスが進む。結果ローン申請は3日ほどで完了し、後は政府からの返答待ちという状態となった。$250Bに潜り込めたかどうかはあと数日後にわかるだろう。

もし潜り込めたら2ヶ月間は今の人員を維持できる。しかしダメだったら更なるリストラを決行する必要が出てくるかもしれない。全てはロックダウンがいつ終わり経済が正常に戻るかにかかっている。ピリピリした春になりそうだ。

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