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会計実務家コラム

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田原中男氏の尖った提案

2017/4/9 その101 ワグナーの曲は美しいか?

戦後のドイツではワグナーの曲は公式の場では演奏されません。

何故か?
ヒットラーが気に入り、第三帝国の宣伝のために盛んに使われていたので、戦後はナチスからの決別の意味を込めて演奏されなくなったためで、決して曲として劣っているわけではありません。

この意味するところは、『ナチスの象徴』ということからの完全なる決別です。

最近、関西のある幼稚園で『教育勅語』が暗礁されていることが話題になりました。これに対して某閣僚が『教育勅語の中身には良い部分もある』という発言をしていましたが、前述の考え方によれば全く趣旨を理解していないことになります。

教育勅語の中身ではなく、戦前の一時期に全体主義体制を推進するために使われていたという事実が重要で、このような体制からの脱却を目指した戦後民主主義の世界では受け入れ難いことです。

つまり『ワグナーの曲は美しいか?』ということになるわけで、本質は『ワグナーの曲は誰にどのように利用されたのか』ということですから、これに照らせば『教育勅語の内容』に良い点かあるかどうかは論点ではないのです。

全体主義体制に対する反省が見られないのは残念というより、大変危険な兆候であり、特に海外からの視点には厳しいものがあることを認識すべきです。

断っておきますが、海外とは近隣の国のみならず、欧米、東南アジアを含めた全ての国からの『目』という認識が大切で、『李下に冠を正さず』『瓜田に履を納れず』ということが大切です。

『歴史認識』という言葉が一定の意味を持つようになってしまったために使いたくない人たちがいるのも自体を複雑にしていますが、実際にあったことを認識するということで、その解釈はそれぞれの人が持てば良いと思います。

同時に、他国からどのように見られているかということも大切で、認識を共有することから始まり、次の時代を築くべきでしょう。

因みに、ドイツでは今でもユダヤ人に対する謝罪を継続していますし、アメリカでは毎年12月7日には“トラトラトラ”がテレビ放送されています。

コラム著者 BMDリサーチ代表 田原中男氏

1946年生まれ。東京大学経済学部、ハーバードビジネススクール(PMD)CIA(公認内部監査人)
1970年、ソニー入社。人事、ビジネス企画、管理業務、子会社再建、内部監査を担当。特に内部監査については、金融、映画等すべてのビジネス領域を包括的に評価することを可能とするグローバルな内部監査体制を構築。2003年からはグローバルなソニーグループ全体の内部統制体制構築に勤める。ソニー退社後、新日本監査法人アドバイザーを経て、現在、内部統制コンサルティングBMDリサーチ代表。

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